#BSMAC2022の記事になります。
BSMアドベントカレンダーは、BSMメンバーがクリスマスまでの期間中、毎日マガジン記事を投稿する企画です。BSMメンバーでない方も全て読むことができますので、クリスマスまで一緒に盛り上がりましょう!
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自己紹介
こんにちは。山本洋と申します。グルドンやYouTubeでは「製材所社長ひろし」と名乗っております43歳です。
その名の通り、三重県松阪市で製材所を営んでおります。代としては四代目です。創業者はひいじいさんに当たる人で、当時は材木商だったようですがなにせ当時のことを知る人ももうおらず、史料も残っていないので「創業○周年!」みたいなことも言えない残念な会社です。
友人と一緒にPodcastをやっていますが、2年くらい放置。気まぐれでYouTubeもやってますが、あまりに気まぐれすぎて数ヶ月単位で更新が滞っています。どちらもそのうちやります。そのうち。
林業と環境の話、木材市場(競り)の話、建築業界の話、Amazonに出品した話…どんなことを書こうかと迷いに迷っているうちに、アドベントカレンダーの投稿日を迎えてしまいました。そうだ!いっそのこと非テックに全振りして、製材のことを書いてしまおう!と開き直ることにしました(苦笑)アドベントカレンダー執筆陣で最少ビュー数を目指します(爆)
「製材」という木材循環に不可欠なミッシングリンク
山、森、林業にはここ数年熱い注目が集まっています。その発端は、環境問題じゃないかと思っています。森のCO2吸収・固定機能が国際的に評価され、古くから植林され手入れしてきた日本の林業が、その持続可能性から見直されてきた、というところが起点だと思います。
そこに、高度情報化社会のアンチテーゼとしての「田舎に住みたい」「自然の中で暮らしたい」欲求が相まって、Uターン、Iターンで林業に転職する方が増えてきています。ここ三重の地でも、素材生産業(=木こり)に携わる人で、大阪や東京から来られた、という方は結構います。
森林浴、森の中で自然を感じる仕事、ということで林業にはなんとなく憧れのようなものもあったりしますよね。そして木の家や木を使った生活雑貨、テーブルなんかもとても良いと誰しもが感じるでしょう。木と人間との間には、本能的とも言える親和性があるんじゃないでしょうか。
ところが、「森」と「生活の中の木」との間には、実に大きなギャップがあります。森に生えている木が、いきなりテーブルになったりはしません。ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドのように、斧で木を切ったら丸太になり、それを切ったら即薪になるわけでは無いのです。そこには「製材」という、重要かつ注目されない工程が存在しています。
木材産業って幅広い
そもそも木材産業は、多くの業者による分業で成り立っています。
植林して管理・維持(木の「保育」といいます)するのが森林所有者で、いわゆる林業家。その育てた木を伐採して、原木市場に販売委託するのが「素材生産業者」、いわゆる「木こり」です。それを実際に競りや入札で売りさばくのが原木市場(いちば)。原木市場から原木を買い、板や柱、梁などの部材に製材するのが製材所です。この辺の流れは、数年前伊勢志摩サミットに合わせて施工された「クリーンウッド法」での説明イメージが分かりやすいので引用しておきます。要するに製材所は、山の木が木製品になるまでに欠かせない歯車であるということです。
製材=丸いものを四角くする
製材所は、簡単に言うと「丸い原木を四角くする仕事」です。丸太にノコギリを入れて行く過程を「木取り(きどり)」と言います。この木取り如何で、儲けが出るか出ないかが決定します。四角くするとき、いかに効率よく、ロスを少なく、かつ売れる物、なるべく高く売れる物を製材するか。
単価の高い=数十年にわたって手入れの行き届いた丸太であればあるほど、その木取りは重要で、いまだに職人技に頼る部分が大きいです。
もっとも、近年は木材価格も低迷しているため、特に中・大規模製材工場では、自動製材するラインにしていることが増えてきています。
他社の製材所の例ですが、丸太の形状を自動的にスキャンし、それに沿って指定されたパターンで製材する様子の動画を貼り付けておきます。
木材品質を大きく左右する「乾燥」
製材した木材は通常、「乾燥」の工程を経ます。乾燥方法にはいくつかあり、天日干しにして放置する「天然乾燥」、対照的に位置するのが「人工乾燥」です。機械設備によって乾燥させる人工乾燥の中にも温度で区分けすると低温・中温・高温に分かれ、熱風を当てる方法、気圧をコントロールして早く乾かす方法、マイクロ波を当てて水分を抜く方法など様々な乾燥方法を、用途や予算に応じて使います。乾燥のさせ方がそのまま品質になるといっても過言ではありません。
同業の仲間である古谷さんがコラムでうまくまとめて書かれているのでリンクを張っておきます。ついでに僕が書いたやつも。
柱・梁の「割れ」は欠陥じゃない
なお、柱や梁など「芯」を持った木材は乾燥過程で割れることが多いですが、割れの方向と荷重のかかる方向が違うため、強度には影響しません。新築の木造住宅で、特に1年目、2年目ではまだ木材が乾いていく過程にあるため、「ピシッ」という木材が割れる音が聞こえたりしますが、欠陥ではありませんし、耐震強度が落ちるということもないのでご安心ください。
「最終仕上げ」で塗装までやったり
乾燥させた木材はさらに「仕上げ加工」をします。カンナ掛け、と言った方が分かりやすいです。乾燥工程で木材は曲がったり縮んだりするので、少し削って狂いを整えます。
木材に仕上げ加工をしたところで、製材所の仕事は終わりです。後は大工さんや木工職人の手に渡り、住宅部材や木工作品に形を変えていきます。
ちなみに弊社の場合、板材を専門にしていますので、仕上げ加工も単なるカンナ掛けだけではなく、フローリングの形状に削り込んだり、節を埋めたり、サンドペーパーで研磨したり、さらに油性塗料や着色塗料を塗ったりすることもあります。
そんなわけで、製材のことに興味を持って頂けたら幸いです。
セーザイはエンタメだ!
実は地元・三重内の業界の仲間で、製材のことをもっと分かりやすく、しかも楽しく理解できるように、と製材をゲームにしてしまった団体があります。その名も「セーザイゲーム」。僕も先月初体験したのですが、これが大盛り上がり。製材がエンタテインメントになるのか、とその可能性に度肝を抜かれました。製材の話をしても何の興味も示さなかった小学生が、セーザイゲームをやった後では同じ内容でも食い入るように説明を聞いていたと。まだ試作・開発途上で、ゲーム本体は1セットのみ、インストラクター数名と一緒に貸し出し、という状況ですが、自分たちの団体でも1セット作ってイベント開催とかしてみたいです。
最後までお読みいただきありがとうございます!
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